映画『岬の兄妹』レビュー 〜主演女優 和田光沙さんに最大級のリスペクト〜

映画を見終わって映画館を出た瞬間に、目に入る風景が茶番に見える作品に出会うことがある。数時間前の自分の価値観が微妙にゆがんでみえ、現実と虚構の区別がつかなくなるような錯覚である。 普段の生活では目に触れない、接することのない世界の物語を目の前に突きつけられた瞬間に、それまでの自分の価値観は役に立たない、無駄なもののように感じ、虚脱感に見舞われるのである。 本作、『岬の兄妹』もそういう類の作品だ。 […]

2番じゃだめなんですか? 〜映画『ファースト・マン』〜人類史上初めて月面着陸した船長の素顔 

デイミアン・チャゼル監督最新作、『ファースト・マン』 先日、デイミアン・チャゼル監督の最新作、『ファースト・マン』をIMAXで観賞してきた。 デイミアン・チャゼル監督の映画の好きなところは、物語に音楽が溢れ出す質感を感じるところだ。 過去作の「セッション」も「ラ・ラ・ランド」も、ジャズへの深い愛情をもつ監督ならではの世界観が、スクリーンとスピーカーを通じ、観ているこちら側のハートに響き渡る。 今回 […]

どんな国で生きていきたいか?個々が考えるための時代の参考書 〜映画 マイケル・ムーアの世界侵略のススメ〜

『井の中の蛙大海を知らず。』 という言葉があるように、 私達は、その中で暮らしていると[当たり前]という呪縛に縛られていることすら気づかない。 当たり前のように税金を払い、当たり前のように学校に行く、当たり前のように満員電車にゆられ、当たり前のように疲れた月曜日を迎える。 20代前半で仕事を始め、結婚、出産、子育て、ついには介護。特に女性は、自分の事よりも人生の大半を他人(家族)の事ばかり考えて過 […]

映画『ROMA/ローマ』〜激動のメキシコで生きる女性の物語〜

ローマ/ROMA

カンヌ映画祭には出なかったが、極めてカンヌっぽい作品 Netflixオリジナル映画というには、そのクオリティは飛び抜けて素晴らしい。劇場公開しなかったから、カンヌ映画祭にはノミネートされなかったというが、きっとカンヌに出ていたら最高賞を受賞したに違いない。 色々調べてみたら、劇場公開しなかった理由は、『俳優も無名で、全編とおしてスペイン語の映画なので興行的に苦戦するだろう。だからNetflixと組 […]

【映画】ロマンス 〜肩の力が抜けていくぬるさが最高のロマンス〜

もうすぐ、バレンタインデーですね。毎年、バレンタインデーが近づくと、おすすめのラブ・ストーリーを紹介しているのですが、今回は、最近見直した、タナダユキ監督の『ロマンス』についてレビューしたいと思います。 最近、とても日本の女性映画監督の活躍がめざましいですね。 もちろん、そう感じるのは一部の映画ファンだけかもしれませんが、やはり、『オンナゴコロ』は『女』が描くのに限る、と私は思います。 今回紹介す […]

“きみの鳥はうたえる”『佐知子』と、“寝ても覚めても”『朝子』に見る女性の魔力と魅力

※レビューはネタバレはしていませんが、事前情報を入れずに映画を見たい方は、くれぐれもご注意ください。 昨今、映画館ではキラキラのJK映画が花盛りだ。胸キュンとか、壁ドンとか、顎クイとか…女性をときめかせる言葉は実に甘くて、理想の恋を追い求める女性達の貪欲さは、古今東西、変わらない。 しかしながら、これらJK映画の反対側では、実にシブい邦画も公開されていて、巷の映画ファンを喜ばせているか […]

シェイプ・オブ・ウォーター (映画レビュー)

胸の奥の愛の塊をとりだしてごらん。それは、誰にも邪魔されないし、誰にも汚されない 良い映画を観て感じるリアリティは心を震わせ、まるで自分もスクリーンの中にいるような錯覚を覚え、主人公と一緒に泣き、主人公と一緒に笑う。それが映画の醍醐味であろうし、そんな感覚を味わいたくて、映画を観ているようなものである。 であれば、完全なるファンタジーであれば、なかなか感情移入しずらく、どこか現実味を感じず、取り残 […]

15時17分、パリ行き (映画レビュー)

私は『奇跡』という言葉を信じていない。でも、これだけは『奇跡だ』と言いたい よくある映画のキャッチコピーに『○○の奇跡』とか『奇跡の○○』と使われるのが大嫌いだ。(笑)そもそも、私は奇跡を信じていない。 すべてにおいて、奇跡なんかなくて、あくまでも『必然』という事象の角度を変えた照らし方が『奇跡』に見えると考えてしまうタイプである。 それだけリアリストで、論理的な思考を好むので、映画における奇跡の […]

映画『スリービルボード』レビュー 〜それでも、行き場の無いやるせなさの出口は何処に〜

白か黒か。 善か悪か。 正義か不正義か。 世の中はいつも、オセロの駒をどちらかに返そうとする。 返ったオセロの駒の数で、そして勝利を実感するまで、やらないと気がすまない。 そして、自分の事ならまだしも、見知らぬ誰かの代理戦争までやってのけるのだから、世の中は忙しい。 しかし、皆、裏返ったオセロの駒の色まで吟味しない。そこには、白や黒だけではなく、様々な色がマーブル状に溶け込んで、誰にもジャッジでき […]

映画『デトロイト』レビュー 〜It Ain’t Fair〜

目次 米国におけるブラック・フェイス デトロイト暴動、アンジェモーテルでの事件 圧倒的な臨場感 普遍的な問題『差別』について 米国におけるブラック・フェイス 先日、ある民放のバラエティ番組で芸人さんが顔を黒塗りして笑いをとった事が『差別につながる』『そんなことない、ただの笑いだ』といった類の論争が、ネット上で沸き起こった。 私は、番組を観ていないし、何を論議しているのか分からなかったので、その論争 […]

映画『ハクソーリッジ』わたしたちは、戦争は体験こそしていないけど、(世界を見渡せば)常に戦争が起きている時代に生きている

わたしたちは、戦争は体験こそしていないけど、(世界を見渡せば)常に戦争が起きている時代に生きている (以下文中引用)ー浦添市ウェブサイトー “毎年6月は沖縄県にとっては大切な時期であり、平和を願い、あの激しかった沖縄戦を忘れることなく、後世に伝えるための数々の催し物が行われます。浦添 市では、本作『ハクソー・リッジ』を通じて沖縄戦や前田高地での戦いに関心をもった人への平和学習や、平和パネル展といっ […]

働く大人の女性のためのラブコメ映画『ホリディ:The Holiday』

疲れた頭と心を癒やす大人のラブコメ 目次 映画の世界で凛と煌く女性監督(ナンシー・マイヤーズ) 働く女性の不器用な恋愛 主人公2人の内面を、周りの人との関わりでコミカルに描く アマンダの選択、アイリスの選択 男性に尽くす事と、男性に流されることは全く違う 映画の世界で凛と煌く女性監督(ナンシー・マイヤーズ) 自分のメンタルの状態を選ばない映画というものがある。 どんなに疲れていても、どんなに気分が […]

レッドタートル ある島の物語(2016年:フランス)映画レビュー<3.2点>

抽象化された人間の生 フランス映画ジブリ版 ジブリ映画とされながら、本作はフランス映画である。カンヌ国際映画祭で『ある視点部門』にノミネートされた事などからも、実にクロウトうけする抽象的な作品であった。 全編通して台詞が無いという事が話題になったが、確かにこの作品に台詞は要らない。 むしろ、台詞があったら邪魔だったろう。台詞が無いことで、こんなにも作品の雰囲気を良い方向に仕上げているあたりは、流石 […]

あなた、その川を渡らないで(2014年:韓国)映画レビュー

生きるために必要なものが宗教なら、死ぬために必要なのは、たった一人の愛する人 2014年、本国の韓国で空前の大ヒットとなったドキュメンタリー映画。 劇場での観客動員数が450万人。韓国の人口が約5,000万人だから、10人に一人が劇場で本作を観たという計算なのだそうだ。これが、本映画の最大のキャッチコピーとなっている。 450万人の観客動員数といったら、邦画でいうと、どの映画のレベルなんだろう?と […]

わたしは、ダニエル・ブレイク(2016年:イギリス)映画レビュー

気高く誇り高き、守られるべき尊厳の物語 目次 『国』という括り(くくり)の中でしか生きられない私たち 皆保険制度があるのに、自己責任社会 守られるべき尊厳と、誇り高い人間のプライド 映画収益の50円が寄付される 政治家という職業はいらない、国を動かす『人』でいて欲しい 映画館でフードドライブ!賞味期限が1ヶ月以上ある、缶詰を劇場へお持ちください。 『国』という括り(くくり)の中でしか生きられない私 […]

哭声 コクソン(2016年:韓国)映画レビュー

ひたすら混乱。そして圧倒的な映画力 これほどまで、映画を見終わった後で、ネタバレ解説を欲する映画は無い。 混乱に混乱を重ねた後に、どうやっても組み合わないパズルにフラストレーションを感じるが、それでも言わんとしていることを『知りたい』欲求にかられた。 なので、映画の後は町山さんの解説を聞いて、映画に隠された伏線、メタファー、罠をなんとか理解できた。しかし、監督が描きたかった本筋をしっかり理解するた […]

すれ違いのダイアリーズ(2014年:タイ)映画レビュー

邦画ではなかなか味わえない純粋さ Amazonビデオで観られます。ぜひ、ご鑑賞ください。 軒並み、Filmarksレビュアーさんが高い評価をしていたので、とても気になっていたタイ映画。自国のタイでは大ヒットした作品だそうですね。 タイ映画は『愛しのゴースト』と本作くらいしか観たことが無いかもしれません。 正直、見終わった時に、おもわず『なんで可愛らしい』と感じてしまいました。 冒頭の数分間は、『な […]

ラ・ラ・ランドの余韻に浸りながら、ライアン・ゴズリングの魅力を再確認する3作品

目次 ラ・ラ・ランドを観に行った ラブ・アゲイン(CRAZY, STUPID, LOVE.) きみに読む物語 ブルーバレンタイン ラ・ラ・ランドを観に行った 先日の、(米)アカデミー賞でひときわ賑わいをみせた作品賞。 わずかに作品賞ではオスカーを逃したものの、とんだハプニング効果もあり、大きな話題となっている『ラ・ラ・ランド』。 私も、ご多分に漏れず公開当日に劇場に観に行ってきた。 鑑賞前から、さ […]

グザヴィエ・ドランの世界〜たかが世界の終わり(It’s Only the End of the World)〜

今日は、グザヴィエ・ドラン監督の最新作、たかが世界の終わり(It’s Only the End of the World)を観てきました。そのレビューをまとめました。 (※ネタバレには気を使って書いてはおりますが、一部ネタバレに近い表現もございますのでご注意ください) 家族とは、一番近くて、 一番めんどくさい他人ではあるが 冒頭から最後まで、『なぜ本作は、ドラン自身が主役を演じなかったのだろう?』 […]

NHK BS「巨匠スコセッシ“沈黙”に挑む~よみがえる遠藤周作の世界~」

2017年1月21日、ある1本の映画が公開される。 それは、マーティン・スコセッシ監督の『沈黙ーサイレンス』。この作品は、あの有名な映画監督、マーティン・スコセッシの最新作というだけでなく、彼が28年の歳月をかけ構想しつづけてきた、懇親の1作であることから、各方面で話題を呼んでいる作品だ。 その公開を記念し、先日、NHK BSで「巨匠スコセッシ“沈黙”に挑む~よみがえる遠藤周作の世界~」というドキ […]