このままじゃあ 終われない〜出井伸之と“やめソニー”たちの逆襲(NHK BS)




 

すっと背筋を伸ばし、さっそうと歩く薄いブルーのネクタイと上品な濃いグレーのスーツ姿の紳士。

 

世界のソニーの元会長、出井伸之氏だ。
出井氏は75歳。

とてもスタイリッシュなその出で立ちに、時代を生きた男の強さとセンスの良さを感じる。

 

 

先日、NHK BSの番組で、このままじゃあ終われない 〜出井伸之と”やめソニー”たちの逆襲 という番組を観た。

 

“やめソニー”とは、かつてはソニーで活躍した優秀な方々で、
その後、各方面で活躍している起業家達のことだ。

 

番組は、NHKのディレクターが、かつてのソニー会長である出井氏に、こんな質問を投げることから始まる。

 

『出井さんが、SONYを壊したのではないか?
という事についてはどう思われますか?』

 

なんと、勇気のある質問だろうか?と私は耳を疑った。

 

それに対し、出井氏は、一瞬、どう答えるべきか悩むように一呼吸置いた後、

 

 

『そう言われるなら光栄でしょうね。

それくらいのリーダーシップを発揮したのですから。

自分が失敗を認めなきゃ、ソニーは変わらないのではないか?と思います』



と、丁寧に返答した。

最後は、両方の口角をニヤリとあげ、笑みで返した出井氏だったが、
私の目には、決して敗北を認めるような弱々しい姿には見えなかった。

 

むしろ、そう言われる事に対し、どこか不服で、どこか納得がいかないようなそんな目の強さを感じたのだった。

 

1995年、平の取締役から14人抜きで社長に就任。

創業者世代では無い、初の経営者に抜擢。

1997年にはVAIO、

1999年にはAIBO、プレイステーション2

時代を先取りしたヒット商品をたてつづけに生み出した。

 

月次とヒット商品を生み出した、出井氏の黄金時代。

これからは、ブロードバンドの時代だと、

様々な事業をしかけたが、その前に立ちはだかった、アメリカのアップル。

 

レコード会社や映画供給会社などソフトをもち、
多くの工場を抱えたソニーが、これらソフトを持たない会社に負けた。

 

ここが、ソニーの大きな大誤算だったと言われている。

 

それから、大規模なリストラや工場閉鎖を行ったが、大きな変革は見込めず、

責任を取る形で辞任した、出井氏。

 

今は、ベンチャー企業に投資する会社を立ち上げ、10人たらずの小さな会社を運営しているそうだ。



会社は、目配りの聞く、10人くらいの規模が一番良いと出井氏は言った。

 

さらに最近では、地方でビジネスを立ち上げるベンチャー企業をサポートし、
地方の活性化と日本のものづくりの再生にチャレンジしている。

 

番組全体は、ソニーを辞めた能力のある技術者たちが、様々な方面で、次の逆襲の一手を打つため、活躍している姿をまとめていた。

 

それぞれが、自分たちの能力をフルに生かし活躍している。

その姿に、そこはかとない明るい日本が透けて見えるようで、なんだか元気が出た。

 

 

日本という国は、ベンチャー企業が生まれにくいと言われている。

しかし、出井氏はじめ、やめソニーのみなさんは、

大企業には出来ない新しい取り組みで、
次のマーケットを生み出そうとしているのだった。



実に、明るい。

 

そういえば、出井氏の言葉で、実に爽快な一言があった。

 

ベンチャー起業家たちとの勉強会での一コマ。

 

ある起業家が

 

もしも、自分たちが大手企業と組むなどしたら
買収されるリスクがある。そうすると株主総会などで
発言力を持たれたりするというリスクはどう考えたら良いか?

 

と質問した。

 

すると出井氏、

 

「大企業に買われるのが怖かったら、そんな企業やめたほうがいい。

 大企業が相手にしないマーケットで生かしてもらえている訳であり、

 その間に、どれだけ成長するか?というスピードの競争なんだ。

 買い手が現れてもいいんじゃないかという

 気持ちでやらないと成長できない。」



実に、おっしゃる通りな訳であり、

実に、爽快で勇気の出る一言だと思った。

 

 

もっともっと日本は高く飛べる。

もっともっとビジネスで成長していける。

チャレンジできる間は、出来る限りチャレンジをし続ける。

 

今の日本には、こんなカオスの中から
これで、絶対、頭一つ抜け出せる!という肝の座った勇気みたいなものが

足りないのかも知れない….とさえ思ったのだ。

 

番組の最後、NHKのディレクターが
ビルの谷間に沈む夕陽を眺めている出井氏に言った。

 

「日本はまた日が登りますか?」

 

すると、出井氏は笑ってこういった。

 

「はははっ。日はもう昇っていますよ。

 それを(みんなが)沈む沈むというから….。

 昼もあれば夜もあるわけで、

 そういう意味では20年十分睡眠とったわけですから

 成熟したあとに、また行けるんじゃないですか、日本はね。」

 

番組の最後に、この一言をもってきたディレクターのセンスに感動した。

 

日本は夜明けを待ってるんじゃない。

昇り続けている太陽にかかった雲で

霞んでいるだけかも知れない。

だから、その雲を払いのければいいだけだ。

 

そんな風に、心にそっと灯火が灯る音が聞こえるような
とても元気のでる番組だった。

 

出井氏とやめソニーの今後の活躍に期待。