NHK BS「巨匠スコセッシ“沈黙”に挑む~よみがえる遠藤周作の世界~」


2017年1月21日、ある1本の映画が公開される。

それは、マーティン・スコセッシ監督の『沈黙ーサイレンス』。この作品は、あの有名な映画監督、マーティン・スコセッシの最新作というだけでなく、彼が28年の歳月をかけ構想しつづけてきた、懇親の1作であることから、各方面で話題を呼んでいる作品だ。

その公開を記念し、先日、NHK BSで「巨匠スコセッシ“沈黙”に挑む~よみがえる遠藤周作の世界~」というドキュメンタリー番組が放送された。{2017年1月2日(月) 午後9時00分(110分)・再放送2017年1月7日(土) 午後7時00分(110分)}

番組は、110分の中で、監督自身のインタビューと、日本の映画監督である塚本晋也監督によるナレーションなどで構成されており、非常に分かりやすい番組になっていた。

映画公開を前に、なかなか有意義だったのでブログで紹介したい。

物語「沈黙」は、誰もが知る遠藤周作の作品である。約50年前に発表された作品で、17世紀初頭のキリシタン弾圧をテーマにした物語である。マーティン・スコセッシ監督は、28年前に、この遠藤周作の小説に出会い感銘をうけ、必ず映画化することを夢見て映画監督人生を歩んできたのだという。

番組の中で彼はこう言っていた。

『これまでの自分の生き様や考え方を映画の中で表現してきた。映画と私生活は切り離されない。特にこの作品(沈黙)には私の思いが投影されている。』(マーティン・スコセッシ)

まさに、マーティン・スコセッシ監督の集大成とも言える作品にしあがったのだろう。彼の半生などを振り返っても、彼の研ぎ澄まされた感性と思いが、マーブル調に混ざり合い出来上がった作品になっていることを示していた。

番組のドキュメンタリーの中では、NHK取材班に28年間の映画製作工程を明らかにしてくれたのだという。そこが、とても興味深かった。



特に、日本人俳優を含む撮影現場では、激しいキリシタン弾圧シーンで、監督初め現場スタッフ全員が、その場で一緒に『苦しみ』を体験したのだという。それがとても感動的だったと監督はインタビューで答えていた。美しさ、残酷さ、悲しさ。その撮影現場で触れたのは『神』そのもので、それが存在するのかしないのか、を含め感動したのだという。

まるでそれは、映画の撮影というよりも、『魂の共鳴』なのではないかと思った。

撮影は、物語の進行順に行われたというから、役者陣の感情移入もしやすかったのではないだろうか。その辺りも見どころである。

特に、日本人俳優の演技も楽しみだ。
(以下、敬称略)イッセー尾形・窪塚洋介・浅野忠信・塚本晋也。
全員、日本の俳優の中でも、『演技派』と呼ばれる役者さんばかり。そのキャスティングをみるだけでも、流石、映画を知り尽くした監督なんだなと思う。

番組の中では、監督のルーツにも触れていた。
監督は、ニューヨークのリトル・イタリーで幼少期を過ごしている。
リトル・イタリーというダウンタウンでは、労働者階級が真面目に働く反面で、ギャングなどの暴力も共存していたという。ギャングの街で移民の子として生まれ育ったスコセッシ監督は、教会に通うことで、強くて偉大なキリストに憧れ、神父になるための学校にまで通ったのだそうだ。

そのため、スコセッシ監督の中には、『信仰』という大命題が支配しつつも、それと対比する『暴力』という存在もまた、彼の人生のテーマになったのだそうだ。それは、彼がこれまで世に出してきた映画の中にも表現されてきている。

『信仰』と『暴力』。

相反するように見えながらも、共存してしている未完成な存在が『人間である』という事に気付かされるのである。

昨今、過激なテロや宗教対立、人種差別や弾圧など、世界は多くの問題を抱えている。これらは、そこで生きている人びとを恐怖に陥れ、哀しみと不安に苛まれている。解決の糸口すらもみいだせない不安な社会で、いよいよ、私たちが内なるものに気づかなければならない時を迎えているのかもしれない。暴力から開放される時、その神の姿は、私たちにどう映るのだろうか?この『サイレンス 〜沈黙』の沈黙の中に描かれているのかもしれない。



スコセッシ監督監督が、遠藤周作の『沈黙』を通して伝えたかった事は何なのか?
現場スタッフが感じた『神』の存在というものは何なのか?

これらの答えが、映画『サイレンス:沈黙』の中に、きっと表現されているのだろう。

若い頃からあった自分のテーマを60年たって表現することができた。(マーティン・スコセッシ)

スコセッシ監督の『沈黙』の、その音と言葉を聞くのが楽しみである。

*番組は2017年1月7日(土) 午後7時00分(110分)に再放送されますので、ご興味ある方はどうぞ。

沈黙ーサイレンス オフィシャルサイト