ドキュメンタリー映画『ザ・トゥルー・コスト〜ファストファッション 真の代償〜』




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『コスト』とは。

以前、ニュースで日本国内のお豆腐屋さんの苦悩が取り上げられた時期があった。
大手スーパーからの(仕入れ値)値下げ交渉がきつく、作っても作っても大きな利益が出ない、という類(たぐい)のものだ。

長く続いた日本のデフレ経済。

 

“より安いものが 良いもの”
“より安く買うことが 良いこと”

 

という価値観が蔓延し、世の中には激安ショップばかりが増えていった。

 

その風潮は、ファッション業界も同様だ。
数年前から『ファストファッション』という業態が、日本のファッション業界を大きく変えてきたのだ。

 

ファストファッション(fast fashion)とは、最新の流行を採り入れながら低価格に抑えた衣料品を、短いサイクルで世界的に大量生産・販売するファッションブランドやその業態をさす。(引用:Wikipedia)

 

正直、私はファストファッション系のショップで衣料品を買うことがほとんど無いので、どんな商品ラインナップがあって、どれくらいの価格で売られているかは、さほど詳しくはない。

 

昔、日本のファストファッションブランドで、1〜2度くらいTシャツのようなものを買ったことがあるが、数回洗濯したら型くずれしたし、なんだか肌触りもシャッキリしないので、もう買わなくなった。

それから、海外のファストファッションブランドが日本に進出してきても、ショップに見に行くことも無いし、買ったりもしない。よって、よく分からないのが正直なところだ。

しかし、一つだけ気になることがあった。
それは、『なぜ、そんなに安く出せるのか?』ということだった。




商売をしていれば、一つの製品(商品)を世に出すのに、どれくらいのコストがかかるかがイメージできる。

製品を作る材料費(仕入れ値)以外に、実に多くのコストがかかる。

制作に携わる“人件費”。
作業場の“光熱費”や“通信費”などのインフラにかかわるコスト。
そして、従業員の保険料などなど。

とにかく、ものすごい『コスト』がかかる。
なのに、ジーンズやジャケット等が、ものすごく安い価格で店頭に並ぶのだ。
それを実現するには、圧倒的なシステムの改良か仕入れコストを削るか、利益を削るしか無いだろう?
ファストファッションは、どうやって利益を出しているのだろうか?

とても、不思議だった。

 

そんな中、数年前に起こったバングラデッシュの縫製工場ビル倒壊事故。(ダッカ近郊ビル崩落事故)この事故をきっかけに、世界のファストファッション事情が注目されたのは記憶に新しい。

ダッカ近郊ビル崩落事故:2013年4月24日(現地時間)、バングラデシュの首都ダッカにあるシャバールで、8階建ての商業ビル「ラナ・プラザ」が崩壊した事故で。死者1,127人、負傷者2,500人以上の大惨事になった。このビルには縫製工場、銀行、商店などが入居していたが、朝のラッシュアワーに事故が重なり被害が大きくなった。事故前日に当該ビルの亀裂が発見され、ビルの使用を中止するように警告がされていたが、それはビルのオーナーらに無視された。なお28日までにビル所有者、工場経営者などは逮捕された。(引用:Wikipedia)

 

ファストファッションブームがもたらす光と影。
これらを詳らかに綴ったドキュメンタリー映画『ザ・トゥルー・コスト 〜ファストファッション 真の代償〜』は、考えさせられる作品だったので、そのレビューをまとめたい。

 

ただ、

まず最初に、本レビューを書く前に前置きしておきたいことがある。

本ドキュメンタリー映画は、具体的なファストファッションブランド名を名指しで指摘しているものではない。なので、絶対悪がどれであるがを、名指しで指摘した映画ではないということだ。

また、“どこかの企業がこんな悪いことをしている。”かのように、誹謗中傷するような作品でもない。あくまでも、客観的かつ中立の立場で、冷静に取材をまとめた作品である。よって、作品を通して、消費者としての消費社会を見つめなおすきっかけをもたらす映画であるということを前置きしたい。

(また、見方を変えれば、ファストファッションブランドに押されている、それ以外のブランドが、あえてファストファッションバッシングをしているかのようにも見て取れる。しかし、本作はクラウドファンディングで作られたようなので、特定のスポンサーがついている訳ではなさそうなので、あくまでも中立な立場で社会問題をとりあげているのだとは思う。ただ、その辺りは詳しく調べていないのでご容赦ください。)

日給3ドル以下で働く途上国の女性たち

世界のメジャーなファストファッション系のナショナルブランドの多くは、発展途上国に縫製作業を委託している。世界には4,000万人の人が、衣服工場で働いていると言われている。

 

特に、その中でも、途上国であるバングラデッシュ。
400万人程の人が、バングラデッシュで衣料品の製造に関わっているそうだ。そのうち85%は貧困層の女性。しかも、日給3ドル以下で働いている。

 

肉体労働者とは異なり、比較的安全で女性でも働くことのできる仕事であるため、多くの女性が従事しているのだそうだ。しかし、日給3ドル以下とは、かなり安い。

そこには、労働組合の影響力が弱く、ストライキやデモも無効で、昇給を懇願しても聞き入れてもらえない状況にあるという理由があるようだった。

 

ここで自然と想像するのが、「低賃金でも、仕事をもたらしているのだから人々のためになっているのでは?」という疑問だ。そう考えるのは当然だろうが、この実情は、こんな風に言葉で簡単に説明できるほど単純なものではない。なぜ、その理屈が通らないのかは、本編を見て理解していただきたい。




具体的な問題は、本編を見ていただき理解してもらえれば良いと思うが、豊かで平和な日本とは随分かけ離れた現実に考えさせられる事が多くという事だけは念押ししたい。

さらに、このファストファッション流行の背景に隠れた問題は、貧困層の低賃金問題だけに限局しない事も明らかになっているので、下記に書き留めておきたい。

 

深刻な環境汚染と健康被害

本編の中でも、特に考えさせられたのは、衣料品製造に関連する工場がもたらす環境汚染である。

途上国で大量に製造される衣料品工場からでる化学薬品が近隣の自然を汚染していく。危険な薬品を無毒化してから排水する技術も配慮もなく、多くの化学物質が垂れ流されている。そして、そこに含まれる薬物で汚染された水を飲み、食物を育て、それを食べて生活している民間人の体に起こっている変化。

 

これこそ、ファストファッション業界の功罪と言えるのではないかと思った。

 

具体的な問題は、ぜひ映画を観ていただいたほうが良いので書かないが、こんな事が影で起こっているのに、平気でモノを消費する生活は耐えられないと心底感じてしまった。

 

さらに、衣料品工場による環境汚染のみならず、問題の根本は、綿(コットン)づくりまでに遡る。

大量の格安の綿を収穫するために、遺伝子組み換えや危険な農薬の大量使用など、問題は尽きない。

そして、世界中で大量に捨てられる衣類のゴミの山。地球に帰らない化学繊維のごみの山も、大きな社会問題になっている。

 

この辺りの問題もすべて、本作にインタビューとしてまとめられているので、是非見て欲しい。

 

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消費する社会とどう向き合うか

ここまで書くと、まるで、ファストファッション系の服は一切買うな

と、聞こえるかもしれない。しかし、そんな単純な話では無いので、短絡的に捉えるのはむしろ危険である。

 

なぜなら、今住んでいる私達の国、日本自体が行き過ぎた資本主義の中、モノを消費することでしか成り立たない社会になることで、平和と豊かさを満喫しているからである。

 

積極的にモノを買わないということは、自分が生業としている仕事も売れない、という事に直結するからである。

買わない=売れない。このパラドックスを、ここまで熟された社会の中で、この矛盾を受け入れながら生きていなかければならないからである。




では、どうすれば良いのだろうか?

せめて、『より良い』と思える行動をとりながら生きていくためにはどうすれば良いのだろうか?

その答えは、正直、分からない。消費者として、人間の基本的人権を大切しに、環境を配慮した製品を優先的に購入する、という事になるのであろう。しかし、買うもの買うものを、その都度精査し購入するという行動も、なかなか非現実的であるだろうから、もう少し広い視野で、このことを捉える必要があるのだろう。

 

結果、さまざまな事を加味して考えると、このような結論に至るのだろう。

まずは、必要なものを適正価格で購入し、長く使い続ける。

これしかないように思う。

 

もともと私は、洋服は沢山持つ生活スタイルを送ってはいない。

若干高めでも、長く使え、流行に左右されない着心地の良いものを数着着回している。それらは、洗濯するごとに肌にやさしく着やすくなるし、型くずれしない。型くずれするほど劣化するには、何年もかかるし、その頃は、もう捨てても良いという状況であるので感謝して捨てる。

やはり、このスタイルで安いものの大量消費する生活は、少し考え直したいとつくづく思う。

 

私達の日常で、もっとも身近にある衣料品。
そのビジネスに隠された光と闇が、このドキュメンタリー映画を通じてよく見える。

ただし、この行き過ぎた資本主義の中で、生きている事実は否定出来ないということを、押さえた上で考えていかなければならないのだろうとは思う。ただ単に、キレイ事ではやり過ごせない事も沢山あるからだ。

 

また、本作品で考えさせられたもう一つの事がある。

それは、冒頭にも書いた、国内のお豆腐屋さんの値切り交渉の問題にも近いことだ。圧倒的にバイヤーの立場が強く、仕入れ業者が適正価格で買ってもらえないなどの問題は、実に深刻で、自分たちに置き換えても身近な問題であるだろう。そこも同時に考えていかなければならない問題であるようにも思う。

 

適正価格で、安全安心なものを必要なだけ買う。ライフスタイル自体をミニマムにする必要を大きく感じるドキュメンタリー映画だった。

現在、こちらの映画館で上映中なので、ぜひ、ご鑑賞ください。

 




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