映画レビュー:こわれゆく女




精神がこわれていく妻に、どこまでも妻と向き合えない夫
1974年の映画だと知らずにみたが、あまり古さを感じない。神経症気味の妻を持て余しながらも、深い愛情から一人で家庭を切り盛りする、労働者階級の中年男。。突然の水道のトラブルでしょっちゅう家を空ける夫に、妻の気持ちは次第に壊れていき、精神病院に入院するまでに。あらすじを聞くと、クレイジーな妻の物語のように見えるが、私は、主役は夫のような気もする。
確かに、家庭や妻、よき母というものを守るために、あまりに自分を追い込みすぎた妻のパーソナリティも大きいが、決して、それは特別な妻の姿ではない。誰もがもつ、当たり前の感情が、あまりにも深すぎたり不器用すぎただけ。その妻の魂のSOSを感じ取り、妻と向き合わなければならないのが夫の役割。しかし、夫は向き合えない、というか、妻に何が起きているかも分からないし、空気も読めない。決して、暴力をふるったり、暴言を吐くわけではないのに、その夫の空気の読めなさが、ヒタヒタと妻に覆いかぶさる。全編、146分のうち、妻だけのカットと夫だけのカットが半々くらいにある。私は、夫だけのカットの中に、妻を追い込む、夫の無意識下の圧力を感じる。壊れていく妻を抱きながら「傷つけていたら謝るから」と夫は言う。しかし、傷つけているかどうかも分からない夫に、妻は癒やされないのだ。
観る人により感想も違う映画だろう。私は、どこまでも不器用に自分を追い込む妻と、空気を読めない罪の意識を感じられない夫の、普通の夫婦に起きたサスペンス映画にさえ見えた。いい映画でした。既婚者の男性は、ぜひ観たほうがいい。(笑)