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※これは、映画:かぐや姫の物語のレビューが一部含まれています。気をつけて書いてはおりますが、一部ネタバレにつながる部分もありますのでご注意ください
キネマ旬報ベスト10
先日、映画好きが注目するといわれている“キネマ旬報”の2013年度版 ベストテンが発表された。
ベストテンの中に、スタジオジブリ2作品がランクインされていた。もちろん、“風立ちぬ”と“かぐや姫の物語”。しかし、注目すべきはその順位。
4位:かぐや姫の物語
7位:風立ちぬ
であった。
どちらも評判高い作品ではあるが、興行収入や観客動員数から考えても、2つの作品の順位は逆では?と思う人も多いだろう。
実はこの間、満を持して“かぐや姫の物語”をスクリーンで観て来た。
それはそれは、素晴らしい作品で、感情の高まりを抑えることができないほどだった。そして、この“キネマ旬報”のベストテンに『なるほど』と共感を覚えたのだ。
ということで、『映画:かぐや姫の物語』のどこがどのように良かったのかを記録として残しておきたい。そう思い、この記事をまとめてみた。
生命感溢れる演出
映画『風立ちぬ』をすでに観た人なら一度は見ているだろう。
線画でかかれた異色のアニメーション“かぐや姫の物語”の予告編の映像。姫がすさまじい勢いでかけていく迫力あるシーン。誰もが一瞬、『なんか独特な不思議なアニメだな』と思ったに違いない。
そう、映画:かぐや姫の物語は、完成前のデッサンのようなエンピツの線画調で仕上げられたアニメーションだ。
これは、高畑勲監督がこだわった描画法だという。
『完成の仕上げ前の迫力あるデッサンを、そのまま絵にしたい』からだそうだ。
線を綺麗にしあげてしまうと、その迫力が失われるような気がするからだという。
まさにその通りだった。
画面から伝わるその迫力は、観ている私の心をぐいっと捉えて、物語の中にズリズリと引き込んでいく。
その息遣いはとてもリアルで、目の前にいるようなリアリティがある。人の動きも滑らかで、髪の毛が風になびく柔らかさとなめらかさは、アニメーションの中で吹いている風を、そのまま感じているようだった。
つまり、この線画のアニメーションの中にあるのは、真の意味でのリアリティ。
絵の中に吹き込まれた命が、生き生きと画面の中で動き回っているようだった。
映画冒頭から、じわりじわりと感情の高まりを感じていく。
最初から一気に、物語に引き込まれているのが分かる。その感覚は、自分自身がその物語の中に入っているような気もするし、客観的に目の前で観ているようにも感じる。
どちらとも言えないが、とにかく、物語に引き込まれて、私の心を離さないのだ。
その理由の一番は、“生命力にあふれた演出”だろう。
登場人物の動きや背景に描かれた絵すべてに生命力が吹き込まれているのだ。
生命の美しさと日々を生きる躍動感、そんなものが、すべてのカットから伝わってくる。なんと素晴らしい演出なのかと思わずにはいられない。
また、線画でかかれたアニメーションを着色したのが透明水彩絵の具。水彩絵具は、ポスターカラーの着色と違い、塗り直しができないので、非常に大変なんだという。
この水彩のタッチも、物語を美しくしている要素の一つである。水彩でかかれた風景は、まるでアートだ。そのカットを切り取っても、美しい色彩を放つ絵画のようだ。
肯定から否定へ 「今の全ては過去のすべて」
さらに、素晴らしいのは物語の脚本・シナリオ。
前半の生き生きした生命の描写から、後半にかけての物語の展開は秀逸だった。
その輝かしい命の息吹を、体いっぱいで堪能していると、それを一瞬にして否定する結末に持っていかれる。かぐや姫が月に帰ることは、これらを否定し絶望へと導くのである。
肯定から否定へ。
この挑戦的な生死感の投げかけが、とてもシュールで観ている人の心を大きく揺さぶる。
そして、最後のエンドロール。
『いのちの記憶』というエンディング曲で、観客はようやく救われる。
このエンディング曲がなければ、観ているものは、答えの見つからない絶望のまま終わったことだろう。エンディング曲に含まれる歌詞、『今の全ては過去のすべて』。悲しみも愛しさも、過去からつながる命の記憶のバトンを渡すように、いつか昇華していく、そんな優しい手触りで締めくくられるエンディング曲は、特に秀逸であった。
そして、理由もわからず、本能的に流れる涙。涙でエンドロールが滲んでよく見えなくなった。
そうなのだ。このとおり、この映画は、アニメーション、脚本、演出、音楽、主題歌、すべてが素晴らしいのだ。
何一つ妥協なく、魂をこめて作られた作品であることがすべてのディテールから分かる。
この作品は、高畑監督の構想から8年の歳月をかけて完成させたアニメーションだ。
すべてにこだわり続け、劇場公開直前まで試行錯誤を繰り返し、完成した作品だ。
だからこそ、観ている私達の心を大きくゆさぶり、感動とも感激とも表現しがたい、なんともいえない感情を残してくれる。
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明日を生きる活力に
こうして、映画:かぐや姫の物語に心揺さぶられた理由をまとめてみてよく分かる。高畑勲監督が8年かけて作り上げたクリエイティブの高さは尋常ではない。そして、ここまでやり遂げたのは、高畑監督だったからだ。
ジブリというブランドに支えられ、監督の過去の作品の評価に裏付けられたおかげではあるものの、これらを最後までやり遂げる執念と監督の情熱には、心の底から敬意を評したいものである。
映画は創造というクリエイティブの世界だ。
ゆえに、作り手の魂がそのままつめ込まれてしまう。
観る人の心を揺さぶり、いつまでもいつまでも心の中に、その時感じた感情の残像を残し続ける。そんな体験をしたくて、映画を観る。
ここまで魂にあふれた作品を観ると、自分自身の仕事や生き方にももっともっと情熱を傾けて行きたい、と思わずにいられない。
日々、自分が取り組んでいるものは、どこまで情熱をかけているだろうか?自分自身に、厳しく問いかけてしまいたくなる。そんな刺激をうけ、明日の活力につながっていくような気さえしてくる。
クリエイティブというものは、そんな力強さを持っているのである。
参考:
ノンフィクションW 高畑勲、「かぐや姫の物語」をつくる。
http://www.wowow.co.jp/pg_info/detail/104048/
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