映画の好みは人それぞれだ。
私自身は、“こういうジャンルの映画が好みだ”と確固たるものは、さほど無いが、できるだけ感情移入して観られる映画が、どちらかといえば好きだ。
イギリス映画、フランス映画、ハリウッド映画、韓国映画の順で好きで、アクションやホラー系はあまり好まず、社会派ヒューマンかラブ・ストーリー、サスペンスが多い。
邦画も大好きで観るが、邦画の場合は、どちらかといえば、色の付いたTVによく出る俳優さんよりも、あまり有名ではないが演技力のあるキャストの方が好む。
そういう意味では、映画 “SEESAW”は、私好みの一作だった。
この映画は俳優としてキャリアを積んだ完山京洪監督の、(長編映画)監督デビューとなる自主映画作品だそうだ。
時間は1時間と短いが、デビュー作とは思えないほどよく出来た作品だった。
2010年に映画が完成した後、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭においてSKIPシティアワードを受賞、ハワイ国際映画祭、ウィーン国際映画祭など様々な国際映画祭に招待され、海外でも評判の高い映画とのこと。
さらに、劇場公開にあたり、クラウドファンディングサイト「モーションギャラリー」にて配給宣伝費の一部をサポーターから募るプロジェクトを行ったと後で知り、とても驚いた。
とりわけ、STORYはこのブログでは書かないことにしよう。
なぜなら、何の先入観も前情報も無しに観たほうが感情移入しやすいからだ。
タイトルの“SEESAW:シーソー”も、そのタイトルが持つ意味が分かるのは、作品をすべて鑑賞した後にじんわり感じる程度だ。
何万通りもあるだろう恋人たちの日常が、淡々と映し出されており、その平凡な日常の中で、繊細にかつ危うげに彼らの心が揺れていく。
何が正解で、何が不正解なのか?
毎日、毎日、小さなジャッジを繰り返す。
後悔しないように生きていても、後悔してしまう出来事に遭遇することもある。
だから、正解も不正解も無いのに、恋人たちは、悩みとまどい、すれ違う。
きっと、この作品は、ある程度の恋愛を経験した大人が観て何かを感じる作品だろう。
『あぁ、あの時、自分もこうだった』
『あぁ、分かる分かる、この感じ』
そんな感情移入が、ラストまでずっと続く。
ラストまでは、その感情の炎は、ゆらゆらと揺れる細いロウソクのようで、ラスト直前で、その想いが一気に大きな炎に変わっていく。
そう。
一番身近な人達を、愛おしく大切に生きていくこと。
決して、大きなイベントはなくとも、
決して、衝撃的なドキドキが続かなくとも、
平穏で、空気のような日常が、なんと愛おしいものなのか、そんな気持ちにさせてくれる。
STORYやシナリオは、どちらかといえば平坦かもしれない。一見、たいくつに思えるくらいに平坦かもしれない。
でも、それをカバーしているのが役者さんの演技力。
とてもリアルに、個々のキャラクターが息づいている。
それが感情移入を深く大きくさせるのだ。
最近の映画は、マスメディアで大きくとりあげられないとあまり有名になれない。でも、こういう所に良い邦画は眠っていると感じた。映画は色んな好みがあっていいと思う。
だけど、
有名な俳優さんが出ていて、
有名な監督さんが撮影していて、
巨額な予算で撮影した映画もいいが、
こういった隠れた名作も、もっと注目されてもいいと思っている。
▼オフィシャルサイト “SEESAW”