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【映画レビュー】椿三十郎

 

以前、映画「乱」を観てから、
モノクロの黒澤明監督作品を観てみたいと思っていましたが、
モノクロであり音声が聞き取りにくいというイメージから
なんとなく後回しになって今に至ります。

 

“でも、今年こそは!”と奮い立ち、

延長コード付きのヘッドフォンで、
録画してあった映画を観てみました。

私の(モノクロ)クロサワデビューは「椿三十郎」。

数年前、織田裕二さんのリメイクで話題にもなりました。

ストーリーもキャスティングも何もかも
前情報無しで観てみました。

まずは、結論と言える感想から。

“素晴らしい!”

思わず、エンドロールの所で、
テレビの前で拍手をするところでした。

何が素晴らしいって。

いや、全てでしょうね。

全てとか全部とか、あいまいな表現が
すこぶる嫌いな私ですが(笑)、あえてこう表現したくなりました。

まぁ、具体的にあえてあげるのであれば

1)脚本

2)役者

3)演出

この3つでしょうか?

つまり、映画を構成する構成要素全てです。

まず、何よりも脚本が秀逸です。

ハラハラ、ドキドキするストーリー展開と
それを表現する脚本。

スピルバーグとか、カリオストロの城とか

あんな感じですね。THE 冒険活劇で感じる爽快感です。

多くの世界の巨匠と呼ばれる有名監督が
黒澤監督の影響をうけた理由が分かりました。

あと役者。

黒澤監督というのは、役者さんに対し、
実際の役で着る着物を、クランクイン前から着せて生活させ、
自分の体に馴染んだ頃をみはらかってクランクインしたそうですね。

そうですそうです。

侍の着物の縫い目一つ一つが役に染みこみ、その一人ひとりの人生が
透けて見えるような役作りをされているようでした。

役者一人ひとりが、立体的に浮き上がってくるようです。

そして演出。

臨場感とか迫力とかを十分に引き出すための
カットや動き、セリフのタイミング。

セリフのイントネーションやスピードまで計算されています。

何よりも、

全編通して、本当に「ぷっ」と笑いがこみ上げてくるような

ユーモラスな構成が本当に魅力的で、
何度も声をあげて笑ってしまいました。

最初から最後まで目が離せない展開なのですが、
一つ一つの出来事やイベントが
ストーリー全体に絡み合っていて
全く矛盾が無いのも特徴です。

矛盾なく、それぞれのイベントをクリアしていくので

ストーリー全体が、すごくまとまって見えるわけです。

映画というのは、様々なジャンルがあって、

恋愛映画、サスペンス、ヒューマンなどなど、
ひとそれぞれ好みもありながら選んで観ています。

だから、いいも悪いも、それぞれの好みでしょう。

ただ、

映画とは監督が作るものであり
その監督の意図を汲み取り、役者が表現するクリエイティブな作品であり、
映画そのものが監督の力量で変わります。

だから、作風は好みでユーザーが選ぶとしても、
クリエイティブな作品としての評価は、監督の評価そのものだと思います。

黒澤明監督の作品を初めて観て、それをしみじみ実感しました。

よい作品とは、役者一人ひとりが単独で動くのではなく、
監督のコンダクトの元、塊レベルで矛盾なく動いているように見え、
ストーリーや脚本が生きているようにみえるのです。

だからこそ、作品としてのまとまり感があり
観終わった後に、爽快な気分になったり、
なんとも言えない余韻に浸ったり、感動して涙するわけです。

私は、邦画を見ることが多く、
感情移入して観るのが好きなタイプですが、

映画を見ていると、

あの役者さんは演技がうまいけど、
あの役者さんは、ちょっと合わないな….とか感じることがあります。

でも、この「椿三十郎」は、すべてのキャストが
隅々まで役になりきり、その役柄の人生を演じています。

フィクションでありながら、
ノンフィクションみたいに感情が映画の中に溶け込める。

まさに、映画の醍醐味を堪能しました。

これからも、少しずつ、
黒澤明監督作品を、観ていこうと思ってます。

今のところ、撮りためていた録画リストの中に
「天国と地獄」が入っているので、次はこれかな。

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