フランス映画ジブリ版
ジブリ映画とされながら、本作はフランス映画である。カンヌ国際映画祭で『ある視点部門』にノミネートされた事などからも、実にクロウトうけする抽象的な作品であった。
全編通して台詞が無いという事が話題になったが、確かにこの作品に台詞は要らない。
むしろ、台詞があったら邪魔だったろう。台詞が無いことで、こんなにも作品の雰囲気を良い方向に仕上げているあたりは、流石であった。
フランス人監督と高畑勲氏、そして鈴木敏夫プロデューサー。
ジブリ映画といいながらも、宮﨑駿監督の方じゃなく高畑勲監督の方。
なかなか、観る人を選ぶ作品なのかもしれない。
『どこから来たのか、どこへ行くのか いのちは?』
確かに、本作には主人公である男が何者で、そこで何が起きているのかは説明されない。全てが抽象化されていて、ただただ万物の生の営みと、その中で如何に人間が何者でもないことだけが伝わってくる。
生きることもシンプルで、死ぬこともシンプル。
自然の中に溶け込んだ人間は、いともヤワで、単なる一つの生物体。
地球を征服したかのごとく傲慢に振る舞う人間を、生の原点に戻してくれる哲学的な一作であることは間違いないだろう。
ただし、ジブリ映画として鑑賞するには、若干の期待外れ感がでてしまうのは否めないであろう。