2016年 私のベスト邦画『永い言い訳』


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2016年もあとわずか。
今年も沢山の名作映画と出会い、その映画の世界にワクワク・ドキドキさせられ、心躍る日々を送ることができた1年でした。
数年前から始めた映画の記録(レビュー)、Filmarksのレビュー数も、あと1本で1,000本です。

多くの映画人の皆様に、沢山の感動と刺激を与えていただいたことに感謝し、また来年も多くの名作に出会える事を楽しみに、1年の締めくくりにしたいと思います。

さて、そんな2016年ではありましたが、今年を振り返り、個人的なベスト映画についてブログを書いてみたいと思います。

毎年、邦画と洋画で、自分のベスト映画を選んでいますが、今年は邦画の当たり年という事もあり、邦画を1本選ぶのが難しかった年でもありました。

特に、『怒り』『湯を沸かすほどの熱い愛』『この世界の片隅に』などなど、様々な名作に出会い、感動し胸震える瞬間が沢山ありました。そんな中で、私が決めたマイベスト映画は西川美和監督の『永い言い訳』です。

 

恐らく、映画好きのユーザーさんは、この『永い言い訳』をトップ10に入れていることと思います。しかし、1位にしている人はあまりいないのではないかと思いました。でも、私は、私らしい1本を選ぶ事にしました。どの作品も素晴らしかったのですが、特にこの作品は、『男性を通して女性の本音』を描いた所が、本当に素晴らしい作品だったからです。その理由を、少し下記にまとめてみます。



西川美和監督の描きおろし小説の映画化

本作は、西川美和監督のオリジナル作品です。
最初に、本作の小説を書いていったそうです。その小説を元に、映画化したという完全にオリジナル作品です。昨今の映画は原作があったり、脚本が別の人だったり、漫画が原作だったりと、オリジナルの小説と脚本で勝負をする作品があまり目立たないという現状があります。
西川美和監督の完全オリジナル作品という点は、自分の中の大きなポイントとなりました。

もちろん、シナリオはとても良かったです。

優しくもあり、厳しくもあり、常に日常にある小さな気づきを見逃さない細やかさ、そして、小さな場面で襲いかかる『痛み』の表現。

すべてにおいて、女性らしい目線で、人間の本質を表現したシナリオに感動しました。

大好きな映画監督、ウディ・アレンは『脚本を監督にいじらせたくなかったら、自分が監督になって映画を作るしか無い』と思い監督になったと聞いています。

脚本という屋台骨を活かすも殺すも、やはり監督の力量なのですよね。そう実感した作品でした。

 

男性を通して『女性』の本音を描く

本作は、主人公である本木雅弘さんが、突然、妻を失う事から物語が始まります。

全編通して、この夫の目線で進んでいくのですが、妻の死後の夫の葛藤の中に、めいいっぱい妻の影が覆いかぶさるという、ある意味残酷なほど『女性の本音』が描きだされた作品でした。

亡くなった妻役は深津絵里さんなのですが、ほんの数シーンしか登場しないのに、死んだ妻の存在感が呪縛のように覆いかぶさります。

妻の死後の夫の葛藤を通じて、空気のように当たり前だった妻の本音が、自然と浮かび上がる構成になっているところが、すこぶる渋いと思いました。

回想シーンもほとんどないのに、妻の残像がお仕置きのように夫を苦しめるのです。

『昨日まであった当たり前』の重さに気付かされると共に、突然、身近な人を失うということを思い知らされます。

その意味や重さは、妻から説明されるわけでもなく、ひたすら夫の葛藤を通して描かれている所がとても素晴らしかったです。



当たり前という特別な存在

『無くして初めて分かる。』

この使い古された言葉は、長い間、私たちの教訓として耳の痛い言葉となっています。
それなのに、忙しい日常は、この当たり前の貴重性を忘れてしまいます。

この作品は、2011年の東日本大震災の後に、西川美和監督が書き下ろした小説です。

あの震災で、至る所で起きた突然の別れ。

朝まで、普通にあった当たり前の世界が、突如崩れることへの無常さは、あの震災を通じて、誰もが痛感したことでしょう。それでも、残念な事に、私たちの記憶は薄れていきます。また、当たり前を当たり前にしてしまい、刺激的で目の前の楽しい感情に心がそれていくのです。

そんな弱い私たちの心を、当たり前という特別な存在を再認識させるための思考に引き戻してくれるのが、本作でした。

世界を変えたり、世界に貢献したりすることは、とても貴重で素晴らしい事です。

しかし、この目の前にある家族や友人など、小さな世界を大切にすることができなければ、何も成し遂げられない。そう再認識させられる作品でした。

 

以上『永い言い訳』のレビューでした。



前述したとおり、映画『永い言い訳』の他にも、もっともっと語りたい映画は沢山ありました。

そんな一つひとつで感じた感情と、そこで沸き起こった自分の感情こそが、愛おしい瞬間です。
ステキな映画にであい、そこで心動かされる自分の時間こそが、私自身。
そして、それらに刺激され、自分を再構築できるのも映画鑑賞の醍醐味の一つ。

来年も、一つひとつ、感動と気づきを大切に、ステキな1年にしたいです。