スニーカーを秒で買う 魔術のような接客テクニック


買い物しすぎると逆にストレスになる私

私は、あまり物欲がない。

衝動的に何かを欲しいと思うこともあまりないし、自分が本当に好きなものが数アイテムあれば満足、というタイプだ。それゆえに、ひとたび何か欲しいものができると、買うまでにすこぶる時間がかかる。

いわば、吟味しすぎなのだ。

買うまでの準備体操が長く必要で、あれやこれやと考えているうちに、いつの間にか「やっぱり買うのやめよう」となる。それはまるで、やるはずだったジョギングを準備体操しただけでやめてしまうような悲劇だ。とにかく、自分が納得しないと買いたくないのだ。だけど、その裏側には『失敗したくない』という臆病な気持ちが共存しているのかもしれないと自己分析している。

だから、買い物で大量のドーパミンがでることもなく、買い物で発散しようなどという事もおきず、モノに溢れて過ごすことにもさほどの快感はない。むしろ、余計なものを買いすぎてしまったとき、本当にこれは必要な物だったのかと、小一時間悩み軽く落ち込んでしまうことも。わたしにとって、買い物でのストレス発散は、逆にストレスが溜まる事になるから厄介だ。

実に面倒くさい性格だなと、我ながら思ってしまう。 

こんな具合に、モノに溢れて過ごす習慣がないのだが、この間、自分でもあっけにとられるほど、即買いしたことがあった。これは自分でも、かなり驚いた出来事だった。

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そんな私がスニーカーを秒で買う

春の陽気に誘われて、少し歩きやすいウォーキング用のスニーカーを探しにデパートに行った時の事だった。軽くて、自分の足にフィットするスニーカーを探していた。

私は、歩き方が悪いのか、体幹がゆがんでいるのか、なかなか自分にあうシューズが見つからない。土踏まずの所の足のアーチが悪いのかもしれない。かわいいからとデザインだけで選んで靴を買ってしまうと、数時間で足が痛くなり、ほとんど履かない靴と化してしまう。

だから、シューズだけはネットで買いにくい。自分の足のサイズだけでシューズを選ぶと、痛い目にあうからだ。

この日も、歩きやすく履きやすいシューズを探しに、ぐるぐるとお店を回っていた。

ここに来るまで、すでに日をまたいで何店舗か回っていて、なんとなく「こういうシューズがいいなぁ」と目星はついていたものの、まだ購入に至っていなかった。そうはいいながらも、自分がほしいと思うシューズだけを決め打ちして見る段階にきていたので、「もう、そろそろ買おうよ….」という心の声が聞こえてくる。

シューズというものは不思議なもので、見た目と履き心地が全く読めない。好みのデザインがあっても、実際に履くと、まったく自分に合わなかったりして一筋縄ではいかないものだ。

いくつかのメーカーの靴をそそくさと試着しながら、ああじゃない、こうじゃないと数分間の格闘。すると、そんなわたしに店員さんがすかさず声をかけてくれた。

「先程から見ているシューズだったら、このシューズが一番履き心地がいいですよ。ピカイチだと思います」

と、おすすめのシューズを差し出してくれた。

確かに。

店員さんがオススメしてくれたのは、軽くて履きやすそうで、着脱しやすそうなシューズだ。まさに、わたしが目星をつけていた種類のシューズに間違いない。しかも、ノーマークだったので、オススメされなければ、きっとためし履きさえもしなかった事だろう。

“そんなに自信満々にお勧めしてくれるなら….”と、そそくさとためし履きしてみる。

実に軽快な履き心地!これまで試し履きした中で、一番履き心地が良い!全然違う!

実に見事である。

わたしが数分間手にとっている商品のジャンルをすかさずチェックして、適切な商品をアドバイスしてくれる。まさにプロのなせる技だ。

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早すぎても遅すぎてもいけない接客のタイミング

いったい、どこから私の行動をみてたのだろう?

同じようなシューズをチラチラみながら、時に試し履きをして棚に戻す。そんな繰り返しをいつの間にか把握されていて、私が望んでいるシューズを的確にオススメしてくれたのだろうか?

さすがである。

普段の私なら、このシューズが気に入ったとしても、あともう少し見てから購入する。だけど、あまりにも足にフィットしたので、そのまま即買いしてしまった。

慎重すぎる私にしては、秒で即買いしたので、かなり驚きの出来事だ。

接客とセールスとは、実に微妙なバランスと絶妙なタイミングで成功するものである。押しが強すぎると敬遠され消極的すぎると客を逃がす。早く声をかけすぎても客は気持ちが温まらず、遅すぎると別の店へと移動させてしまう。こんなふうに、客と店員の数分間の駆け引きは実に難しい。

わたしのように“石橋を叩いて壊す”タイプには、絶妙なタイミングに、秒で買わせる商品の引き出しをもつことが良い結果を生み出すのであろう。そして、そのタイミングというのは、明確なセオリーなどなく、経験や勘などが功を奏するのではないかと思う。

実に、考えさせられた。

ところで、買ったスニーカーだが、早速、履いてみた。本当に履き心地が良かった。まだ、長距離のウォーキングはしていないが、恐らく足が疲れにくいような気がする。

ほんとうに、店員さんありがとう。

(※写真はイメージです)