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【番組レビュー】離ればなれになった子供たち(福島県相馬市・磯部小の21人の輪)

21人の輪~震災のなかの6年生と先生の日々~
 Eテレ 6月4日(土)午後3時~3時45分

NHK Eテレ(教育テレビ)で福島県相馬市・磯部小学校の、現在(いま)を特集していた。

1年前、福島県相馬市・磯部小学校5年生のクラスでとった一枚の写真。
この21人の生徒のうち、津波被害や放射線の影響などで、7人がいなくなり、14人で新学期を迎えた。

2週間遅れで6年生の一学期がスタート。
低学年の子供の中には、授業中に突然泣き出す子もいて、まだまだ不安や動揺が収まらない中のスタートだ。

番組の中でインタビューに答えていた、6年生の女の子。
ハキハキと答える様は、きっと笑顔の絶えない利発な女の子のようだ。

その女の子がつぶやく。

「昔は、ドレミファソラシドで言ったら、一番高い“ド”だった。
 今は、なんか….“ソ”とか“ラ”みたいな、なんか沈んだ感じ」

クラスのトーンを表現するのに、子供らしい表現だ。
泣いたりはしないものの、表情はどこか寂しそうだった。

同じクラスの別の女の子は、ホームルーム中にこんな事を話した。

「あのね、まみちゃんにもらったメモ帳が残ってたの。
 なんか、分かんないけど、バックの中にポロッと入ってて。
 まだ震災後から1枚も使ってないけど。」

まみちゃんとは、この6年生のクラスメートの中で
唯一、津波で亡くなったお友達。
その子からもらったメモ帳がでてきて、
大切にしている、と言う。

その子の発言に対して、先生がこう答えた。

「“私ここにいるよ”ってポロって出てくるのね。
 忘れないでねって感じだと思うのよ。」

こうして、ゆっくり、ゆっくり……
子供たちは、まみちゃんが震災で亡くなった事を
受け入れようとしているように感じた。

また、放射線の影響などで6年生は、クラスに男の子は2人しかいない。
何人かは、遠くに避難しているからだ。

「男子が2人しかいないから…」と寂しそうに話す、ともやくん。
いつも、男の子2人で遊んでいるようだった。

そんな中、5月のGW中に2日間だけ、りゅうのすけくんが学校に帰ってきた。
りゅうのすけくんは、ともやくんが、小学校で初めてお友達になった子。

大親友だ。
避難先の川崎から相馬市に戻ってきた。

久々の再会に、少し照れくさそうにしながらも
2日間、2人はずっと離れなかった。

限られた2時間という時間で、外にでてサッカーボールで遊ぶ、ともやくんとりゅうのすけくん。相馬市にある磯部小は、屋外での活動は2時間程度に制限されている。

「りゅうのすけくんが神奈川に帰っても寂しくないよ。すぐまた会えるから。」と語る、ともやくん。でも、決して笑顔ではなかった。

GWの合間の2日間を磯部小で過ごし、また避難先の川崎に帰るりゅうのすけくん。

何度も何度も振り返りながら、
何度も何度も立ち止まりながら、教室を後にしたりゅうのすけくん。
「2学期の途中からでも磯部小に帰りたい」と語った。
今もずっと、みんなに描いてもらった寄せ書きノートを肌身離さず持ち歩き、相馬に戻る日を待っている。

子供の健康のために、放射線の影響の少ない所に避難してほしいと、心から願う。

しかし、その反面で、子供たちは子供たちなりに、それまで築いてきた人間関係やコミュニティを失い、全く異なる環境で過ごすことになる。離れていく方も残される方も、心に強い風が吹くんだと、子供たちの表情をみて実感した。

子供ながらに、少しずつだけど、震災を乗り越え、新しい生活に適応しようとしているのが、画面から痛いほど伝わってくる。
泣き出す事などないが、いっぱい、いっぱい、我慢していることだろう。

怒ることも無く、極端にはしゃぐこともなく、
子供たちの周りには、静かだけど、大きな痛みが覆い被さっていることだろう。

私たちは、未来をつむぐ子供たちを守る義務がある。

未来の健全な子供たちをつむぐには、
心と体と社会と、多方面でベストな環境を与えなければならない。

今の原発や放射線の状況だと、それはかなりの難問だ。
でも、それから逃げずに、真っ正面から課題に取り組まなければならないと思った。
できることを精一杯やっていこう、と思う。

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