書籍レビュー『日本の未来を考えよう』出口治明著




日頃、私が好んで読む書籍のジャンルは、主に知識本などが多くフィクション小説はほとんど読みません。マーカーを引きながら読んで、気になった情報や知識はメモしておくことも多々あります。

 

昔は、紙で製本された書籍を買って読むのが日常でしたが、最近、満を持してKindleを購入し、デジタル書籍で読むスタイルに変えてみました。紙の書籍だと、ハードカバーはそれなりに重く、持ち歩きには合っていない本もあります。しかし、(Kindleは)薄いデジタル端末ひとつで、数千冊の書籍を持ち歩けるので便利です。

さらに、Kindleはバックライトで、室内の照明にかかわらず読みやすく目も疲れません。気になったセンテンスには、ハイライトというマーカーも気軽に引けて、後でハイライト部分だけを再確認できます。

知識本を読む事が多い私にとっては、Kindleでの読書は非常に合っていると感じました。

 

さて、最近何冊かKindleで本を読んでみました。その中で、とても勉強になり面白かった本のレビューをしてみたいと思います。それは、出口治明氏の著書『日本の未来を考えよう』(※1)です。著書はライフネット生命の会長である出口治明氏。

様々なデータを元に、今の日本の社会の現状が要約された、さしずめ大人の社会科の教科書といったものでした。言葉の使い方もやさしく、非常に平易な言葉で解説されているため、とても分かりやすかったです。グラフやデータも沢山出てきますが、グラフのまとめ方が分かりやすいので、こちらもまた、分かりやすくなっていて感動するほどでした。

 

経済や社会福祉、政府、教育やエネルギー問題まで、幅広いジャンルを、データに裏付けられた現状分析と未来の課題などが、コンパクトにまとまっています。自分が気になった部分を、少しだけピックアップしてレビューしてみたいと思います。ぜひ、ご参考ください。

 

第一章 借金編

〜株価と為替で見る日本の現実〜
『不況だ、超円高だ、などと後ろ向きなことを言って、政府による保護を求める企業と、それに応えてしまう過保護な親のような日本の政治家。こうしたぬるま湯気質を改めない限り、多くの日本企業の競争力は身につかないでしょう。』

第一章は、世界一の公的借金大国である日本の現状と公的借金が増え続ける訳などが解説されています。世界一の貿易黒字国だった日本が、貿易赤字国になった原因や理由などが分かりやすく理解できました。

 

第二章 人口編

〜高齢者医療と多死社会を考える〜
なお、福祉国家として有名なスウェーデンでは、いわゆる「寝たきり老人」がほとんどいません。理由は簡単で、延命治療をしないからです。
ちなみに北欧では、市民に自立の考え方が行きわたっており、子どもの自立、女性の自立、高齢者の自立が高福祉の背景にあると言われています。したがって、高齢者自らが子どもの世話になりたいなどとは考えず、子どももまた親を引き取るようなことはないのです。結果的に認知症も進まず、足腰もそれほど衰えないそうです。

50年後は、生産年齢人口が半分になるという予測を元に、これからくる超高齢化社会で起こるだろう問題、高齢者医療と多死社会についてまとめられています。この章の、海外のデータの比較は、とても興味深いものがありました。

第4章 政府と軍事力編

〜日本の議員は世界一“美味しい商売”!?〜
日本の国会議員の給与は世界最高水準です。アメリカの2倍、連合王国の4倍にもなります。

スイスやフランスでは地方議員はほぼ無報酬ですし、アメリカやドイツでも州や大都市の議員を除くと、ほぼボランティアに近いレベルの報酬です。

ちなみに、北欧では選挙を次のように教えているそうです。「あらゆる選挙についてメディアは事前予想を行う。メディアの事前予想の通りでよければ、3つの方法がある。1つ目は、選挙に行ってその通りに投票する。2つ目は白票を投じる。3つ目は棄権する。どれを選んでもすべては事前予想と同じ結果となる。事前予想に反対なら方法は1つしかない。投票に行って別の名前を書くしかない。これが選挙というものだ。」と。




この章では、日本の政府が世界と比べて、どれくらいの規模であるかをデータを元に説明されています。併せて、軍事力や軍事予算など、安全保障の観点からデータを解説されていて、とてもわかり易かったです。

 

第7章 国際競争力編

〜国際社会で薄れゆく日本の”存在感”〜
日本はあまり家に次いで2番目に多くの国連分担金を支払っています。

そもそも分担金を決めているのは国連の総会であって(3年毎に分担率を決定)日本ではありません。

外交とは本来打算的なものですし、日本企業の進出を後押しすることも自国にとってプラスですので、投資として考えればODAは重要なものだと考えます。

 

国際社会の中の日本の影響力や、日本の働き方が非効率であることなどが客観的データとともに解説されている章です。ODAなどの外交面での日本の貢献度や、ウィークポイントなどが良くわかりました。

 

第8章 産業編

〜いびつな農業政策〜
実は世の中には「食料自給率」が2種類あります。「カロリーベース」と「生産額ベース」です。いずれも読んで字のごとく、前者は生産量を「カロリー」で計算し、後者は「金額」で計算します。カロリーベースの計算方法を使う国はG7では日本くらいのもの。世界では生産額ベースで見るのがあたりまえです。

日本のカロリーベースの自給率をみると39%。たしかに他の先進国と比べると、一番低いです。
しかし、これを生産額ベースに置き換えると、日本の自給率は一気に68%まで高まります。逆に連合王国は40%へと下がり、ドイツも75%と9%減。世界の基準である生産額ベースで見れば、日本の自給率は決して低いとは言えません。

農家を守るという話で言えば、日本の農業保護率は55.6%もあり、世界では最も高い水準です。

この章では、なんといっても日本の農業についての記述が興味深かったです。とくに、『食料自給率』の情報は目からうろこでした。マスメディアの情報を鵜呑みにすると、社会情勢が真逆に見える事もあるのだな、と思いました。この章では、現在の日本の産業の分析がまとめられていますが、現在、政府が動いている農業政策にも触れられていて勉強になりました。

 

第11章 環境・エネルギー編

〜日本は環境大国になりえるか〜
世界の食料生産量の30%がムダになっている

各国の食料廃棄量を人口で割ってみると、日本が134kgなのに対して、アメリカは179kg、連合王国は225kg、フランスは352kgにもなります。

どの過程で廃棄されるかを見ると、日本では「製造過程」が16%、「卸・小売・外食産業」が21%、「家庭」が63%になっています。他国を見ても、家庭で出る食料廃棄量が最も多くなっています。

東日本大震災から一変した日本のエネルギー政策は、日本国民にとって最も興味深い所です。あまりマスメディアの報道が報道しないようなエネルギーの見方などもまとめられていて、こちらもすごく勉強になりました。また、食料廃棄量の問題も、身にしみました。

 




以上、私が興味深かったものを抜粋しましたが、実際の書籍では、もっともっと豊富なデータを元に、丁寧に解説されています。実際に、最初から最後まで通しで読んだほうが理解が深まると思われます。

ネットニュースやマスメディアが報道する情報には、ある一定の偏りが生じます。

時には、こういう社会科の教科書のような書籍を読むのも、自分の視野や見識を深めるのに役立つと思いました。しばらくしたら、また読み返すような気がします。

 

とても面白かったです。

(※1:出口治明(2015),日本の未来を考えよう,株式会社クロスメディア・パブリッシング)