映画レビュー




リダクテッド/真実の価値

真実の価値を決めるのは誰?
2006年にイラクで起こった米軍兵士による少女レイプ及びその一家惨殺事件を題材にしている、事実に基づくフィクション。ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞。ドキュメンタリー映像を撮影している風景を中心に進んでいく、イラク駐在のアメリカ兵達のすがた。イラク戦争は、ついこの間のように感じるが、ここで起きていることは、大昔の軍国主義時代の事のようにも映る。その頃、日本はどうだっただろうか?今と変わらず平和を謳歌していた。色んな事に無関心で、遠い異国で起きている事を、テレビ画面の映像として眺めていたように思う。真実がどうであれ、罪とされることも、裁かれる事もしない事があるならば、真実の価値とはなんだろう?真実の価値を決めるのは誰だろう?世が世なら、それだけ危うく、漠然としたものでしかない真実。平和ボケしているわたしたちに、一石を投じる作品であることは間違いない。ラストシーンの兵士の告白のシーンが印象的だった。涙目で、妻の頬にキスをしながら真実の告白をするアメリカに無事帰国した兵士。普通は、ここでは感動させるところだろうが、監督はあえてそうしなかったような気がする。その映像の軽さに、絶望と怒りさえ覚える。

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君と歩く世界(原題:RUST AND BONE)

ここで“ジュ・テーム”か。
事故で両脚をなくし絶望し切ったヒロインが、粗野なシングルファーザーとの触れ合いを経て生きる希望を取り戻していく物語。タイトルで勘違いしてはいけない。決して、ベタベタのラブストーリーではない。主人公の男性は、不誠実で野蛮な軽薄なダメダメ男。両脚を失ってしまった女性の喪失感を受け入れるために、献身的に尽くすわけでもない。なのに、どこか憎めない雑な優しさが、主人公の男性の魅力。突然、両脚を失ってしまった美しき女性が、それまで付き合っていた彼や肉親ではなく、赤の他人で、しかも、ほとんど相手の事を知らない、偶然知り合った彼に頼ってしまう理由がなんとなく分かるような気がした。喪失感から癒されるためには、献身的な慰めや同情は、むしろ邪魔。強くたくましい、赤の他人の背中が居心地良かったのだろう。気持ちの温度差はあるものの、なんとなく近づいて、なんとなく求め合う。このタイミングで“ジュ・テーム”というセリフをねじこんだか….、というシーンが、とてもステキだった。なんか、最後は爽やかな余韻を残す映画だった。ちなみに、邦題の“君と歩く世界”ってのは、あんまり合ってない。(笑)

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SHAME(シェイム)

愛なら、毎晩、ティッシュにくるんで捨てている、というコピー!
評価が分かれる作品なのかな?と思う。映画のソーシャル(Filmarks)で、いいレビューを観たので録画して観てみたが。なんか、すごい。作品全体はかなり好みだった。性依存症の兄と恋愛依存症の妹。主人公の欲求の奥にひそむ本当の心の闇を暴き出す衝撃的な人間ドラマ。という内容になっているが、映画全体には、兄妹二人の背景や、それぞれの苦しみの根本などは何も触れていないので、なんとなく想像してみて行く感じ。それでも十分、映像とシナリオに引き込まれるものがある。前半、1時間くらいまでは、兄の性依存症の姿が軽めに描かれるが、1時間すぎたころの、職場の同僚の女性とのホテルでのシーンで、作品に厚みが出てくる。後半は、すごく良い。日本では、R18(?)でも公開は難しいかも…と言われたそうだが、確かに、カップルや友達同士で観るのは避けたい。全体的に、性描写はそれほど過激ではないのだが、内面にちょっとくるから。(笑)夜、ひっそりと1人で観てこそ、作品の世界観に陶酔できるだろう。シンプルなシナリオに、なかなか深いテーマをしかけた感じがクールだった。”愛なら、毎晩、ティッシュにくるんで捨てている”というコピー。なるほどね!という感じ。

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奇跡のリンゴ

軽い画と軽いシナリオ

映画レビュー:奇跡のリンゴ。中村監督作品は、濱田岳さん主演の「みなさん、さようなら」がちょっと良かったので、実際のモデルのいる実話を元にした本作は、どういう映画にしたのかなぁ?と興味があったが、極めて軽く、2時間ドラマのようだった。リンゴの無農薬栽培に取り組んだ木村秋則さんがモデルという事だが、結果、どうやって実らせたか?ということを延々と追っていった感じ。周りの人々の関係性とか感情とか、なぜ無農薬栽培にこれほどまでにもこだわったのか?とか、本当の苦悩とはなんだったのか?という点が薄く感じる。まるで自己中心的に、盲目的に、あてもなく突っ走った感じが、よく分からず感情移入しにくい。キャストも、阿部サダヲさんと菅野美穂さんは、あまりにもイメージが強すぎて、農家の夫婦に見えない。東北訛りも不自然。いったい、テーマは何だったのだろう?と、最後までさらっと観てしまった感じが否めなかった。好みの問題なので辛口ですいません。

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シュガーマン 奇跡に愛された男

2013年、第85回アカデミー賞で長編ドキュメンタリー映画賞を受賞。
1970年代にアメリカでデビューした後、アパルトヘイト下の南アフリカで支持された伝説的ミュージシャン、ロドリゲスの数奇な運命を追ったドキュメンタリー。まさに、「映画みたいな話」とか「映画みたいな人生」だなぁ…とドキュメンタリー映画を観てしみじみ思った。関係者のインタビューで繋いで、ロドリゲスの人生のシナリオを表現しているが、バックに流れる自身の楽曲も含めて、厚みのある彼の人生が浮き上がってくるような作品。先日、この監督が36歳の若さでお亡くなりになったということ。ご冥福をお祈り申し上げます。

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偽りなき者

人間の愚かさを静かに、そして重厚に描いたかなりの良作
なんか、久しぶりにいいサスペンスタッチのヒューマンドラマを観たという感じ。映画冒頭から最後まで、なんとも言えない虚しさと、人間の心理の愚かさに押しつぶされそうな気持ちになる。子どもの作り話がもとで変質者扱いされてしまい、何もかも失い集団ヒステリーと化した世間から迫害される男の物語。とにかく、脚本が良かったと思う。事件が起こる前後の人間関係を、自然なシナリオで緻密に表現してある。第65回カンヌ国際映画祭で主演男優賞だけに主人公のキャラクターは、全編とおして筋が通っていて感情移入しやすい。感情をこらえた表情では、主人公の気持ちに寄り添うように涙が出てしまった。話はいわゆる冤罪の話ではあるが、主人公が過剰に自己中心的に無実を証明しようとするわけでもなく、必死に耐えながら闘う姿に純粋に感動する。その反面で集団ヒステリー化する周りの環境に、なんとも言えない、虚しさと愚かさが覆いかぶさってくるようだ。一度、観たほうが良い良作。
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明日、君がいない(原題 2:37)

邦題のセンスがいまいち
ははぁ、こう来ましたか…と唸る作品。人様のレビューを見て、観たくなった作品で、2006年カンヌ国際映画祭をはじめ各地で絶賛された、オーストラリア映画。監督は、若干、19歳というから驚く。友人の死をきっかけに、それを題材にした友人にささげる映画だという。早熟でいまどきの高校生の痛々しい日常だが、最初のシーンとラストシーンを結ぶ演出がとても良かった。高校生たちの日常の描写を淡々と描きながらも、ラストの描写でぐっと重みをもたせる描き方は、見方によれば文学作品にさえ見えてくる。登場する6人の高校生の一人ひとりのキャラクターも濃い。インタビュー映像を織り交ぜるような手法を取り入れたことで、一人ひとりの存在というものがハッキリしてメリハリがあって良かった。本映画のテーマは「追い詰められてもSOSは届かない」。一見、傷つきやすくもろい青春ストーリーかな?と思うが、意外に奥が深く期待を裏切らない。ただ、邦題の「明日、君がいない」というのはちょっとセンスがない。なんだか、普通の青春メロドラマかな?という雰囲気を醸し出してしまう。原題どおり、「2:37」で良かった。でも、それでは日本は受け入れられないんだろうな。そこがイケてない。

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フランス映画のような静けさ

石川寛監督作品はどれも好みなのだが、この作品だけはなぜかまだ観ていなかった。やはり良い。というか好み。観る人が観たら、「つまらない」と解釈されがちな作品だろう。セリフも少ないし、台本もなく、ほとんどがアドリブ調。微妙につながっている6人の女性たちの、なんとも言えない息苦しさをつないだ映画。思わず、二十歳ぐらいの頃を思い出した。あぁ、こんな気持ち分かる分かる、という感じ。独りではないけれど、なんとなく寂しくて胸に空いた隙間が息苦しい。誰かと繋がりたいけど、いざ繋がるとなんとなく迷いが生じて息苦しい。吸った息を吐きたくて空をみあげても、そこには狭くグレーに曇るTokyoの空。そんな雰囲気の静かな映画。雰囲気が似た邦画もいくつかあるが、セリフやナレーションなど、説明の多くをカットした作りで、ナチュラルなセリフ回しの本作は光っている。時々、心を休めたい時に観ると、じわじわくる感じの映画だと思う。

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パルプフィクション

すべてがカッコイイ

鬼才とはこのこと。そんな言葉を突きつけられる作品。監督もよければ、役者全員がカッコイイ。この単純なシナリオから、いったい、どうすればこんなシュールな画が作れるのか?と不思議。いわゆる、これが監督の才能なんだろう。ギャングものでありながら、どこか憎めない愛すべきキャラクターのギャング二人と、彼らを取り囲む、クールな脇役。ちょいちょい挟んでくるシュールなギャグが、さらに面白さに拍車をかけて飽きさせない。とにかく、カットの構図がかっこいい。まるで日本の漫画のカット割りのような躍動感ある構図ばかり。中でも、銃のかまえ方とタバコのシーンがクールだった。映画冒頭の10分からすでにカッコイイ。さらに、映画全般のトラボルタのダンスのシーンもカッコイイ。こういうのをTHE 映画っていうんだろうな。シュールすぎる!

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ブラッド・ダイアモンド

さすがに、ディカプリオの映画ははずさない!という印象。
1990年代後半のアフリカ、シエラレオネでの、“ブラッド・ダイヤモンド”というダイヤモンドの不正な取引をめぐって起きる不毛な争いのサスペンス映画。激しい内戦を描いた社会派アクション。

ディカプリオは、作品を選んでいるんだろうなぁ。社会派メッセージ性の高い映画でありながらも、アクション部分のハラハラ・ドキドキが十分盛り込まれているため、最初から最後まで飽きさせない。
比較的、軽めの役作りだったが、ディカプリオの演技もアクションもさすが。良さが十二分に出ていた気がする。
内容的には、サスペンスアクションなので、難しくないし分かりやすく観やすい。善と悪、偽善と正義、これらをうまくシナリオに盛り込み、感情移入させやすい構成。ディカプリオ演じる元傭兵の密売人のキャラクターは、物語の中では、若干の浅さを感じたが、ドラマ部分としては丁度よいかもしれない。
肝心のメッセージ性の部分は、内戦でとらえられ過激になっていく少年兵と、その父親との関係が鍵になるのだろうが、そこの描き方は重すぎず軽すぎずという感じだったかもしれない。なので、重い映画を期待してみると、少し物足りなさがある。
また、ジャーナリスト役のジェニファー・コネリーとディカプリオの絡みも、若干の薄さは感じたが、映画のアクセントとしては効果的。
全体的に、観やすく面白い感じにしあがっているので、十分楽しめる。
天然資源というのは、富をもたらす反面で、平気で悪をも生み出す、という社会派ドラマだった。
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パリ、恋人たちの2日間

女性監督ならではの作風

ビフォアシリーズのジュリー・デルピーが監督した作品。なんとなく、ビフォアシリーズに似ているのは置いておいて(笑)、すごく面白かった。女性監督らしいシナリオが素晴らしい。フランス人の彼女とアメリカ人の彼氏。ニューヨークで暮らしていた頃は気付かなかった、2つの国の文化や国民性、価値観の微妙なズレ。テンポよいセリフ回しがとても自然で、「こういうのあるかも」と思わせる臨場感は、女性監督の作品ならでは。たった2日間の出来事なのに、セリフで構成される二人の心理描写がオモシロおかしく飽きさせない。フランス人ってこんな感じなの?と新たな驚きも!

監督:ジュリー・デルピー

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