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【ブログ】障がい者の雇用の場に感動

先日、厚生労働省の広報誌に書く記事のために、障がい者雇用に力を入れている伊勢丹の特例子会社さんにお邪魔しインタビュー取材をさせていただいた。

 

“障がい者雇用支援法”の改正の前に、企業における障がい者雇用の現状をレポートした記事になる。

伊勢丹の特例子会社は、かなり早い段階から障がい者雇用に力を入れており、業界でもとても注目されている企業。

こちらでは、特に中度〜重度の知的障害を持つ人が、沢山働いている。

 

伊勢丹と言えば、百貨店。
その特例子会社であるため、お仕事は百貨店から流れてくるという。
彼らが担っている仕事は、元々は売り場のスタッフが行っていたギフト用のリボン作りや箱作り。また、伝票のゴム印押しなど、80種類の仕事を引き受けているそうだ。

取材の前は、知的障がい者というからには、ある程度、簡単な作業なのかな?と想像していたが、そんなことはなかった。
仕事の種類も豊富だし、そこで働く全員が、全ての作業が出来るようになっているという。

しかも、障害の特性なのだろうか、作業の一つ一つが正確で丁寧だ。

手先の器用さというのか、集中力の素晴らしさというのか、ものすごく仕上がりが美しい。実際、売り場のスタッフも、その仕上がりをみて、自分達よりも上手で丁寧だと賞賛するという。我々だったら、同じ作業の繰り返しということもあり、短時間で飽きてしまうかもしれない。しかし、彼らの集中力は衰えること無く、お昼の鐘がなるまで黙々と重複作業を丁寧にこなしているのだ。

例えば、ギフト用のくるくるしたリボン。

束ねられた複数のリボンを、事務用の目玉クリップで引っ張って、くるくるのリボンに仕上げる。私もやってみたが、コツがあるのだろう、全く上手く作れず使い物にはならなかった。

この日、このリボンを担当していた方はダウン症の方で、作業をしながらずっとニコニコしていた。

その様が妙に癒され、なんとも言えずホッとした空間に感じたものだ。

また、作業中は2名の指導者が彼らの作業のアドバイスをしてくれている。戸惑っている人はいないか、わからないことはないかなど、細やかに目配せしているが、実際は、障がい者自身がテキパキ行動しているので、作業場全体は、指導者のチカラを借りること無く、個々が自立している集団に見えた。

実際、わからない事が発生すればきちんと指導者に相談にくるし、もじもじして作業の進まない人など一人もいない。普通の一般の企業の仕事場と同じ、与えられた仕事を確実に遂行するために、個々が自覚して動いている。

その姿は、私が想像していた障がい者の仕事とは随分異なり、正直、目から鱗が落ちるという感覚だった。

従来は、百貨店の売り場で接客の合間に行っていた事務作業を、反復作業の得意な障がい者に委託し、販売員は本来の業務である接客の仕事に専念する。まさに、企業としては、メリットの大きい取り組みだなのだ。

しかし、そこまで育て上げる指導・教育システムの確率には、時間も労力もかかる。全ての企業が、すぐに取り組めるといものでもないだろう。でも、こういった成功事例から、多くのものを学び取り入れる事で、障害を抱えていても働ける職場が増えるに違いない。彼らをマネジメントしているマネージャーさんがおっしゃっていたが、「自分たちも誰かの役にたっている」という自身のモチベーションが、彼らを高めていくのだという。その一言にすこぶる感動してしまった。

“健常者”、”障がい者”という言葉の区別がある。

しかし、そこの間には、さほど大きな壁など存在しない。

さらに言えば、私たちも明日、障がい者と呼ばれる事にならないという保証もないのだから、その間に壁などあるはずがないのであろう。今、障がい者と呼ばれる彼らは、誰かの役に立っているという、職業意識を高く持って仕事に取り組んでいる。私たちとなんら変わらない同じ世界を生きている。ただ、それぞれの特徴が異なるだけで、それは、国境を超える事なんかよりも、ずっと身近な存在なのだろう。

バリアフリーとか。
差別をなくそうとか。

社会の中で、ハンディを持つ人々を社会が暖かく見守ろうという風潮は加速しているのは間違いない。
しかし、実際問題、全ての人達が偏見などなく、知的障がい者と一緒に働いたり接したりできるだろうか?

本音を言えば、バリアフリーとか言葉で表現するほど簡単な事ではないはずだ。

しかし、こうして社会の中で、自分の得意な所を伸ばしながら生き生きと働く障がい者を見ていると、彼らと交わることは決して難しいことではないと感じる。1人でも多くの人にこの姿を見ていただき、本当の意味でバリアフリーを実現できるよう、社会が変わっていけたらと心から思った。

何よりも、それまで障がい者手当の支給を受けていた彼らが、この職場で契約社員として働き、今は納税者となっているところに、限りなく明るい社会が開けていることを実感した取材だった。

※私がまとめた記事は、「厚生労働」5月号に掲載されています。

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