先日、山形県の羽黒山を訪れた時のエッセイです。
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羽黒山山門あたり |
山形県には出羽三山という3つの山があります。
月山・羽黒山・湯殿山の3つの山の山頂には
それぞれ神社があり、
総称して出羽三山神社と呼ばれます。
そのうち羽黒山の標高は414m。
参道には国宝五重塔があり、
2,446段の石段と杉並木が続きます。
私は、山形県で生まれ育ったので、
子供の頃から羽黒山は身近な山でしたが、
山頂まで登った事がなかったので
今回、初めて登ってみました。
しかし、この五重塔の先が問題です。
ここから急な石段が果てしなく続きます。
石段は、決して歩きやすいようには出来ていません。
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石段 |
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石段 |
通常の階段とは異なり、歩幅が狭く歩きにくい石段です。
石段自体もボコボコしていて、はき慣れたスニーカーでも
簡単に登る事はできません。
でも、そんな荒削りな石段だからこそ、
碧く光るコケや、緑にけむる杉林に自然に馴染みます。
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コケに覆われる杉林 |
延々と続く2,446段は、一気に登る事はできません。
時々休んだり、ジグザクに歩いてみたり。
足を止めるたびに、杉の香りをいっぱいに吸い込みます。
音もなく静かな参道には、とても神聖な空気が流れています。
行き交う人々とは「こんにちは」と挨拶をしたり
「もうちょっとですよ」と励まし合いながら、
歩きにくい石段を登っていきます。
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碧く光るコケ |
私は、音の少ない世界が好きです。
木の葉のカサカサとふれあう音や
名前も知らない鳥のさえずり、
風だけを感じられる音の少ない世界にいると、
本当に必要なものって、
そんなに沢山は無いんだろう….と思います。
にぎやかな都会には無いものが、
この音も何も無い世界にあるような気がします。
片道1時間くらいの参道には、
コンビニの灯りも自動販売機もありません。
エレベーターもエスカレーターもロープウエーもありません。
途中まで登ると、「登るんじゃなかった」と
後悔してしまいそうなくらい急な石段です。
石段が登る人を試しているかのように感じます。
延々と登り続け、もうそろそろ、足も限界に来た頃に
ようやく山頂の神社に到着しました。
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羽黒山神社 |
青空の中で、真っ赤に紅葉した紅葉が1本、
羽黒山詣でを祝福してくれました。
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羽黒山山頂の紅葉 |
最近の神社や参道は、とかくキレイに整備され
観光客向けにお店も沢山立ち並びます。
羽黒山は、そんなことは一切無く、
登る人に容赦なく試練を与えます。
装飾されず、昔のまんまの自然な山。
杉には不思議な癒しがあります。
まっすぐ伸びる杉に癒されながら、
音の少ない世界を楽しんだ一時でした。