iPhoneでiPadで脳卒中急患の診断をアシスト


iPhoneiPadなどのモバイル端末が
医療の現場で活躍しているニュースを
耳にすることも多いだろう。
それほど、ITは医療の中にとけこみ、
医師の診断を助けたり、患者にも大きなメリットをもたらす。
今日は、次回の医療記事「医療のIT」の執筆のため、
東京慈恵会医科大学脳神経外科の高尾医師が
富士フイルムと共同開発した「i-Stroke」について、
高尾医師の取材に伺った。
東京慈恵医科大学 脳神経外科 高尾 医師
だれもが知っている脳卒中。
脳の血管に出血をおこしたり、血管がつまったりする
急性に起こる病気だ。
なかでも、血管が詰まっておこる脳梗塞は
3時間以内であれば血管溶解剤が使用でき、
8時間以内であれば血栓を血管内から除去できる。
つまりは、脳卒中の救急患者が搬送された場合
1分1秒の診断と正確な治療が、患者の運命を左右するのだ。
しかし、日本の医療体制では、
この「時間」に対する認識はまだまだ浅いという。
脳卒中の専門医が、24時間365日当直できる病院は少なく、
搬送から入院受け入れまでに、非常に時間がかかるという
問題が山積している。
そこで、考えられたのが「i-Stroke」。
院内外のどんな場所にいても、
iPhoneやiPadに急患患者の情報が瞬時に送られてくる。
診断に必要な画像はもちろん、必要な場合は患者の状態を動画でも配信される。
しかも、登録されている20名程の医師に、同時にメッセージが届く。
20名に3分間ずつ電話をかけたら60分かかる。
しかし、このシステムなら、一瞬にして一斉に20名の医師に
セカンドオピニオンを仰ぐことができるのだ。
さらに、これらの情報はタイムライン上に時系列で並び更新されていく。
そのたびに、受け取った医師がアドバイスをツイートして投稿できる。
現場で診断している医師が、専門医でなかったとしても
これらの専門医のアドバイスを受け、適切な処置に進むことができるのだ。
当直医など1人の医師の診断を任されるということは、
私たちが想像する以上に、医師は不安で孤独だという。
しかし、遠くにいる専門医とつながっていることで
迅速な診断を患者に提供でき
非常に大きな意味を持つと高尾医師はいう。
また、経験の浅い研修医などが、
患者さんの意識レベルの判定に困ったら
動画を撮影し、他の医師に相談を仰ぐことも可能だそうだ。
日本では、脳卒中で死ぬ人は減っているが
後遺症により、寝たきりになっている人は減っていないといわれている。
寝たきりで施設に入院している人も沢山いるということだ。
これらの人の50%が社会復帰できれば
医療費が5兆円ほど浮くのではないか?と言われているそうだ。
そういった意味では、目の前の患者の命を救うだけでなく
その後遺症で苦しむ人も減らし、日本の医療全体の底上げにもなるはずだ。
高尾先生の話の中で、とても印象に残ったフレーズがあった。
モバイル端末で遠隔診断のアシストをする、
というシステムを考えるとき
ユーザーフレンドリーでなければならない、
と思って作った。
若い医師だけでなく、教授などご高齢の医師でも
簡単に扱えるシステムでないと意味がないから。
そう。
これが、現場の医師の生の声だと思う。
メーカー主導や企業主導で開発すると、
意外とこのあたりが抜け落ちるんだろう。
ついつい、利益目的に考えたり、
「なんとなく高機能」のような
複雑な仕組みにできあがってしまうかもしれない。
実際に使用する医師の目線で
使い勝手を良くする方が良いに決まってるのだ。
診療や研究に忙しい医師でも、
ITに不慣れな医師でも、
簡単に使いこなし、すべて患者さんの診断に
優位に働くようなシステムになったのは、
医師主導で開発されたシステムであるからだ。
そんな風に感じた取材だった。