シェイプ・オブ・ウォーター (映画レビュー)


胸の奥の愛の塊をとりだしてごらん。それは、誰にも邪魔されないし、誰にも汚されない



良い映画を観て感じるリアリティは心を震わせ、まるで自分もスクリーンの中にいるような錯覚を覚え、主人公と一緒に泣き、主人公と一緒に笑う。それが映画の醍醐味であろうし、そんな感覚を味わいたくて、映画を観ているようなものである。

であれば、完全なるファンタジーであれば、なかなか感情移入しずらく、どこか現実味を感じず、取り残されてしまう事も否めない。
ましてや、主人公のお相手が、未知の空想の生物であれば、どこまで、その愛の物語に溶け込むことができるのか?

まさに、『シェイプ・オブ・ウォーター』は、主人公のお相手が、アマゾンの奥地で発見された未知の生物。どこか『美女と野獣』の設定を思い出されるが、本作の場合はリアルな1960年代のアメリカが舞台なので、さらに観るものを混乱させ、そこにどこまでリアリティを感じられるかが難しい設定である。

私も観る前までは、どのような感じのラブ・ストーリーなのか、半信半疑であった。

しかし、お話全体がおとぎ話のような仕立てになっているので、思った以上に自然に感情移入できたのに驚いた。
それはすべて、ギレルモ・デル・トロ監督の映画作りにあると思うし、とても良くできた映画で、あっという間の120分だった。

1960年代の米国とロシアの冷戦時代。
差別や偏見、女性の権利も確立されていない、女性にとっては行きづらい時代に、声を失った女性と未知の生物との愛の物語である。

物語は、とてもテンポよく進み、次から次へと軽やかに展開していくので、シナリオ的にも飽きさせなかった。ひたすら、主人公のイライザの孤独に心を寄せながら、言葉を持たない同士が重ねていく心の交流は、いつの間にか、見る人の心を暖かくさせていく。

何よりも印象に残ったのは、『彼』のフォルム。
とても美しいフォルムが、イライザを包むシーンは、ほんとうに素晴らしいと思った。あのフォルムが唯一、『彼』を『彼』たるものにさせ、愛の物語に成立させるための大事な要素だったように思う。
これは、作品のパンフレットの表紙にもなっているが、このフォルムは、相当こだわったものだろうなと思う。

そして、主人公イライザは、サリー・ホーキンスがうまく演じたというよりも、サリー・ホーキンスそのものという感じなので、最後まで本当に安心して観ていられる感じ。

今年のオスカーに輝いた本作。
おそらく、好き嫌いが別れる作品ではあったと思うが、オスカーにふさわしい作品だと、心から思った。