15時17分、パリ行き (映画レビュー)




私は『奇跡』という言葉を信じていない。でも、これだけは『奇跡だ』と言いたい

よくある映画のキャッチコピーに『○○の奇跡』とか『奇跡の○○』と使われるのが大嫌いだ。(笑)そもそも、私は奇跡を信じていない。

すべてにおいて、奇跡なんかなくて、あくまでも『必然』という事象の角度を変えた照らし方が『奇跡』に見えると考えてしまうタイプである。
それだけリアリストで、論理的な思考を好むので、映画における奇跡の○○だけは、どうしても受け入れがたいものがある。

しかし、この実話の物語だけは、『奇跡だ』と心で何度も叫んでしまった。それほど、理屈では考えられない奇跡の物語だった。

まず驚くべきことは、主役の3人含め、登場人物が本人という事である。役者さながら、いや役者以上の雰囲気を醸し出す彼らの雰囲気に、リアリティを感じざるを得ない。



クリント・イーストウッド監督作品の過去作、『アメリカンスナイパー』や『ハドソン川の奇跡』同様、アメリカにおけるアメリカンヒーローを描いた作品であり、今回も過去作同様、『戦争』というキーワードがやはり入った物語であるが、ご本人登場というリアリティには驚かされる。

そして過去作同様、ヒーローでありながらも、大げさに賛美・賞賛することではなく、両手をギュッと握りしめて讃えたくなるようなヒーローの描き方は、クリント・イーストウッド監督らしさが滲み出る作品であると思う。

特に、主役のスペンサーは本物の軍人なのであるが、やはり役者でない本物の軍人が放つ軍人らしさというものは、何にも代えがたいものがあった。普通の若い青年ではあるものの、トレビの泉ではしゃいでいる姿にさえ、どこか軍人としての凛々しさとたくましさがほとばしるのである。

『何かあったら、この人が守ってくれそう』
そんな、安心感さえ感じさせるオーラを放っている。これが軍人のオーラなんだろうと思った。

また、賛否両論あるだろう映画の構成であるが、これはこれで理解できると私は感じた。たった数分間の、あの瞬間のために主役3人にまつわるエピソードが、映画の大半をしめた。これを間延びしたシナリオのように感じるとは思うが、彼らが実際の人物であり、完全に実話だと考えると、彼らのパーソナリティに思いを馳せる事で、あの瞬間に至るまでの道筋と、やり遂げたことの意味を考えれば、余りあるほどのエピソードであると感じる。

(当然の事ながら、完全にフィクションであれば、かなり目を覆いたくなるような内容であるが、ノンフィクションなので話は別)

偏見、人種差別、戦争、銃社会。
アメリカ社会にはびこる、様々な問題をからめながら、奇跡をおこした3人の青年の勇気の背景をたどる。そんなクリント・イーストウッド監督らしい作品でした。